基礎情報:フロアボールと怪我の予防について③

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本記事について

理学療法士として日本代表チームにご帯同された経験や、選手として国際大会に出場経験を持たれる佐久間英祥さんから、怪我の基礎知識や予防についてのご寄稿を頂きました。

今回は第3段の記事となります。

※過去の記事はこちら


目次

  1. 理学療法士の役割
  2. 違和感を感じたら…
    • 練習中の違和感
    • 試合中の違和感
    • 指導者目線で子供の怪我について
  3. 怪我をしてしまったときの選手自身の受け止め方
  4. 理学療法士のやりがい
    • 私自身の怪我について
    • 理学療法士のやりがい
    • 理学療法士の目線で感じること

理学療法士の役割

理学療法士はPhysical Therapist(フィジカル・セラピスト/PT)とも呼ばれます。

その役割は、『ケガや病気などで身体に障害のある人や障害の発生が予測される人に対して、基本動作能力の回復や維持、および障害の悪化の予防を目的に、運動療法や物理療法などを用いて、自立した日常生活が送れるよう支援する医学的リハビリテーションの専門職』*です。

*日本理学療法士協会より引用

理学療法の対象となるのは怪我や病気により障害のある方がほとんどですが、現在は怪我の予防にも携わる機会が増えています。

また、スポーツの分野においては怪我の治療や予防だけでなく、選手のパフォーマンス向上を目的に介入することもあります。

練習中に違和感を感じたら…

練習中に違和感を感じたら、練習をやめてその後の対応に移ります。その後の対応例として以下の4つが挙げられます。

  1. 様子を見て練習を再開する
  2. その日の練習はやめて自宅で経過観察をする
  3. その日の練習はやめて通院する。
  4. すぐに病院に行く

例えば切り傷や打撲のように一時的な症状の場合は様子を見て練習を再開できます。

足首や膝などをひねってしまった場合(捻挫)は軽いものだとしてもその日の練習参加はやめておきましょう。必要に応じて通院をお勧めします。

痛みの強い捻挫や、骨折の疑いがある場合は早急に病院に行きましょう。このとき固定方法がわかる場合は実施しておくと良いでしょう。

スポーツ外傷に対する応急処置

最近ではPOLICE処置というものも推奨されていますが、一般に実施しやすいのはRICE処置だと思います。

一度は聞いたことがあると思いますが、RICE処置について詳しく知りたい方は、日本整形外科学会の「スポーツ外傷の応急処置」をご覧ください。

試合中に違和感を感じたら

試合中の違和感についても基本的には練習中の対応と同じです。

しかしながらリーグ終盤や選手権大会など、大事な試合ではなかなか出場を諦めたくないものです。軽い捻挫などの場合、テーピングの知識があり正しく処置ができれば出場することも良いでしょう。

ただし、必ず考えていただきたいこととしては、将来を犠牲にするほど目の前の試合は大切かどうかです。痛みを抱えながらプレーを継続することは、怪我が悪化してしまう可能性があることを念頭に置いて判断してください。

日本代表に帯同した際の出来事

私がトレーナーとして日本代表に帯同した際、10代の若い選手が第一試合の第一ピリオドで相手と接触して膝の内側を痛めました。その場で膝関節内側側副靱帯を疑い、その後の対応としてテーピング固定、弾性包帯での圧迫、アイシングを行い、その試合への出場は中止しました。

第2試合では選手の希望もありテーピング固定した状態で1ピリオドだけ出場しましたが、そこで痛みがあったため靭帯損傷を確信してそれ以降の出場を諦めていただきました。

日本代表として海外まで来て試合に出られない悔しさは、私自身が学生の時に経験しているのでよくわかります。

しかし、10代の選手で今後も日本代表として活躍する可能性を考えて、選手、監督と話した上で出場中止を決定しました。その選手が今でも活躍しているのを見ると、あの時出場中止して良かったと感じます。

指導者目線で、子供の怪我について

指導者の皆様には怪我についての知識や応急処置の方法をぜひ身につけていただき、いつでも対応できる状態にしておくことをお願いします。

適切な練習時間や練習環境か、準備運動は十分に行えているか、選手の負荷や休憩が取れているかにも着目していただきたいです。

また、怪我が発生した際は、必ず発生要因を振り返り改善できるかも検討しましょう。

あるとき少年野球で怪我をした子に練習環境を聞いたところ、平日は4時間、休日は8時間練習があり、ウォーミングアップは行っておらず、同じクラブに何人も怪我をしている人がいるということでした。これは明らかにクラブに問題があります。

皆さんのクラブでも怪我が発生を繰り返さないように、環境づくりをお願いいたします。

特に子供の指導に携わる場合は、スポーツだけが生活の主軸にあるわけではありませんので、選手が怪我をせず生涯を通して長くスポーツに関わっていけるように考えていただければ幸いです。

怪我をしてしまったときの選手自身の受け止め方

もし怪我をしてしまったら、競技復帰できるのか、今のレベルまで回復できるのかなど、不安になると思います。

まずは身近な人への相談はもちろん、医師や理学療法士など専門家に相談してください。ネットで症状を検索したり、同じような症状の人に話をしたりする方もいますが、同じ症状でも原因や程度は異なるため、正しく怪我の状態や予後を知ることが大切です。

また、怪我を治すのは理学療法士ではなく選手本人です。理学療法士は回復を手助けすることしかできません。怪我をしてしまった時は治療の受け手にならず、主体的に治療に望むようにしましょう。その際、競技復帰などの希望を医師や理学療法士に伝え、治療目標を明確にするとよいでしょう


私自身の怪我について

実は私自身、何度も怪我で悩んだ経験があります。

高校生の時、U19代表を目指していた時には腰の痛みがあり腰椎椎間板ヘルニアと診断され、学生の頃には膝関節の痛みで思うようにプレーできなかったこともあります。

そんな中で理学療法士の方に救われたことが、私が今の仕事に就いたきっかけです。

その時の理学療法士の方は、フロアボールを知らない方でしたが、競技特性を理解し考慮した上で治療をしてくれて、感動したのを覚えています。

理学療法士のやりがい

理学療法士は医師や看護師よりも患者さんと関わる時間が多い職業で、患者さんの回復していく様子を一番間近で見られます。

スポーツの分野では、怪我によってスポーツを中止してから、競技に復帰し活躍するまで関わることもあります。

患者さんごとに目標は異なりますが、目標を達成した時の笑顔や患者さんからの感謝の言葉がやりがいだと感じます。

理学療法士の目線で感じること

フロアボールだけではありませんが、運動前のウォーミングアップや運動後のクールダウンがなかなか浸透していないように感じます。

またトップレベルを目指す選手でも、体の柔軟性が低い方が意外と多く、日頃ストレッチなどを行えていない印象です。それらを実施していれば怪我を防げたのではないかという事例も何度か見てきました。

今回の記事を読んで少しでも怪我の予防についての関心が高まり、怪我による競技からの離脱が減り、長く楽しくフロアボールを続けられるようなきっかけになれば幸いです。


寄稿者紹介

佐久間英祥 Sakuma Hideyoshi

理学療法士/愛知県東三河ブロリック所属

2013年 男子U19世界フロアボール選手権 日本代表

2016年 男子世界学生フロアボール選手権 日本代表

2018年 男子世界フロアボール選手権 トレーナー帯同

佐久間さんご所属のクラブチーム

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