基礎情報:フロアボールと怪我の予防について②

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本記事について

理学療法士として日本代表チームにご帯同された経験や、選手として国際大会に出場経験を持たれる佐久間英祥さんから、怪我の基礎知識や予防についてのご寄稿を頂きました。

今回は第2段の記事となります。

※前回の記事はこちら

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目次

  1. はじめに
  2. 日頃から柔軟運動に取り組もう
    • 足関節のストレッチ
    • ハムストリングのストレッチ
    • 胸部のストレッチ
  3. 試合前のウォーミングアップ
    • [静的ストレッチ]と[動的ストレッチ]
    • 体温を上昇させよう
    • ダンスでウォーミングアップ
  4. 試合後のクールダウン
  5. 靴に関する3つのポイント
  6. おわりに

    1.はじめに

    前回の記事では怪我の種類としてスポーツ障害とスポーツ外傷とがあり、その発生要因として環境要因と個人要因があることをお伝えしました。

    今回は怪我の予防についてより具体的にお伝えしていきます。

    2.日頃から柔軟運動に取り組もう

    怪我の発生に関わる個人要因として、筋力や体力、柔軟性、間違ったフォームなどがありますが、特に柔軟性については日頃からストレッチを継続することで改善できます

    フロアボールでは足関節、股関節、胸部の柔軟性が特に重要です。簡単なストレッチを一部ご紹介します。

    どのストレッチも共通で時間は30秒〜60秒各1回ずつで良いので、それを1日3回以上できると理想的です。

    運動後・入浴後など体が温まっている時に行うのがおすすめです。

    足関節のストレッチ

    STEP

    つま先を前に向けた状態で足を前後に開き、前の足の膝を曲げます。

    STEP

    後ろの足は膝を伸ばしたままで、ふくらはぎが伸びるのを感じましょう。

    STEP

    体が前に倒れたり、後ろの足のかかとが床から離れないように注意してください。

    ハムストリングのストレッチ

    STEP

    椅子に浅く座り、片足を前に出す

    STEP

    背筋は伸ばしたまま、おへそを前に突き出すように前傾していく

    STEP

    前に出した脚の太ももの後ろが伸びているのと感じたところで止める

    胸部のストレッチ

    STEP

    四つ這いになり、伸ばしたい方の手を外側に伸ばす

    STEP

    肩を床に近づけ、伸ばした手と反対に体を捻る

    STEP

     肩の前面から胸部にかけて伸びているのを感じる

    ここで紹介したストレッチはごく一部ですので、怪我の予防のためにもぜひ他のストレッチにも取り組んでください。

    3.試合前のウォーミングアップ

    運動前のウォーミングアップには怪我の予防だけでなく、パフォーマンス向上の効果もあります。

    まずウォーミングアップを行う前に覚えていただきたいのが、「静的ストレッチ」「動的ストレッチ」についてです。

    静的ストレッチ

    『静的ストレッチ』は、筋肉を伸ばした状態で静止し、その姿勢を維持するストレッチです。

    筋肉を長時間持続して伸ばすことで怪我防止のための柔軟性が向上する一方で、発揮できる筋力が低下するという研究結果もあります。

    ショット時やボディコンタクト時に爆発的な筋力を必要とするフロアボールにおいて、筋力の低下は競技パフォーマンスの低下になる可能性があります。

    股関節周辺のストレッチ

    STEP

    椅子に座り足首を持ちます

    STEP

    胸と太ももをくっつけたまま、膝を伸ばして立ち上がります。

    STEP

    太ももの後ろが伸びているのを感じましょう。

    動的ストレッチ

    動的ストレッチは体を大きく使い、筋肉を伸ばしたり縮めたりしながら行うストレッチで、ブラジル体操マエケン体操も動的ストレッチに分類されます。

    動的ストレッチはその効果として、関節可動域や筋力の向上が期待されているため、静的ストレッチよりも動的ストレッチの方がウォーミングアップに適していると言えるでしょう。

    股関節周辺のストレッチ

    STEP

    背筋を伸ばして片足で直立します。壁や椅子を支えにすると良いです。

    STEP

    足を振り子のように前後に大きく振り上げます。

    STEP

    徐々に振り幅を大きくし、足を前に振り上げた際に太ももの後ろが伸びているのを感じましょう。

    体温を上昇させよう

    ウォーミングアップで重要なことは体温を上昇させることです。

    体温が上昇することで、筋肉の柔軟性や筋力だけでなく、反応速度や酸素利用効率も向上します。季節や時期によって変化しますが、ウォーミングアップは10〜15分程度かけてしっかりと体温が上昇するように行いましょう。

    ウォーミングアップは毎回ルーティンとして行うことで、運動前の心理的な準備にもなります。普段ウォーミングアップを実施していない方はこれを機に始めていただければ幸いです。

    ダンスでウォーミングアップ

    大事なことは、体を大きく使い筋肉を伸ばしたり縮めたりすること、体温を上昇させることです。そのため大きな動きのあるダンスは有効だと考えられます。

    ただし、動きの少ないダンスや、逆に高度な動きを必要とするダンスは、ウォーミングアップの効果がなかったり、怪我につながる可能性もあります。

    私のクラブでは…

    所属クラブで小学生の指導をしていますが、ウォーミングアップには15〜20分ほど時間を使っています。

    内容はジョギングと動的ストレッチを組み合わせたものを10分ほど行い、その後ラダーなど体づくりも兼ねた運動を数分行います。時間に余裕がある時は鬼ごっこなどで体を温めることもあります。

    その他に気をつけていることとして、シュート動作のように爆発的な力(瞬発力)を使う練習は徐々に距離を遠くするなどして、急激な負荷を体に与えないようにしています。

    世界フロアボール選手権でのウォーミングアップの様子もIFF channelでみられますので、こちらもぜひ参考にしてみてください。

    4.試合後のクールダウン

    クールダウンの一番の目的は疲労を残さないようにすることです。クールダウンでよく行われているのが「静的ストレッチ」です。

    ストレッチと疲労回復との関連はまだはっきりとわかっていない現状ですが、静的ストレッチにより疲労が回復したという研究もあります。

    私の見解ですが、試合後にストレッチやジョギング、ウォーキングを行うことで、全身の循環が改善し、疲労物質の蓄積をある程度予防できるのではないかと考えます。

    5.靴に関する3つのポイント

    皆さんはどんな靴を履いていますか?

    フロアボールは専用の靴が数少ないため、靴選びに悩む方も多いのではないでしょうか。

    靴は体から地面に力を伝えたり、地面からの衝撃を吸収したりする役割があり、競技をする上でとても大切な道具であり、体の一部のようなものです。

    靴が合っていないと、足関節や膝関節が不安定になり、足関節捻挫や膝靭帯損傷のリスクが高くなります。正しい靴の履き方を覚えて怪我を予防しましょう。

    靴による怪我の予防として以下の3つポイントがあります。

    ①競技に適した靴かどうか

    通常フロアボールは体育館で行われ、前後の動きだけでなく、左右の切り返し動作が多いのが特徴です。その動きに対応したグリップ力のある靴を選ぶ必要があります。

    フロアボール専用シューズはUNIHOCやasicsが販売しており、スウェーデンでフロアボール用として売られているシューズには、日本でハンドボール(屋内用)や、テニス(クレーコート用)のシューズとして販売されているものもあります。

    私の靴は…

    今履いているのはasicsの『gel fastball3』です。2017年にスウェーデンに旅行に行った際、フロアボールショップで購入し、それ以来ずっと同じシリーズの靴を使っています。日本ではハンドボールシューズとして売られています。

    大学生になった頃までは安価で入手しやすい屋内用のフットサルシューズを履いていましたが、靴をしっかりと選ぶようにしてからは捻挫などの怪我が減っていると感じています。

    ②靴が足の大きさに合っているかどうか

    靴の大きさを決める際に足長(サイズ)と足囲(ワイズ)を測ることが重要です。これらの大きさが合っていないと、靴擦れや足部の不安定性、足指の変形などの原因となります。

    特に成長期の子供には少し大きめの靴を選びがちですが、子供の成長にとって大切な時期だからこそ、足に合った靴を選ぶようにしましょう。

    メーカーやシリーズによって差があるため、実際に販売店で計測してもらい、試し履きしてから靴を買うことをお勧めします。

    ③正しく履けているかどうか

    せっかく足に合った靴を選んだとしても、正しく履けていなければ意味がありません。

    まず、靴を履くときは靴紐を緩めた状態で履き、かかとでトントンと地面を叩きましょう。つま先ではなくかかとを合わせることが大切です。かかとを合わせたら、靴紐を締めていき結びます。

    図1 ダブルアイレット・シューレーシング/参考ASICSより

    このとき私が推奨しているのは、サブホールを利用した「ダブルアイレット・シューレーシング」という方法です。(図1)この方法で結ぶことで、よりかかとをフィットさせることができます。

    かかとを踏んではいけない!

    また、最も重要なこととして、かかとを踏まないようにしましょう。

    靴のかかと部分には「ヒールカウンター」という硬い芯が入っています。このヒールカウンターがあるおかげで、足関節が安定するのです。

    スリッパのようにかかとを踏んだ靴では、ヒールカウンターは崩れてしまい、足関節は不安定な状態になります。その状態で切り返し動作などを繰り返すと、足関節の靭帯や、膝関節周辺組織に過度な負荷がかかり、怪我の発症につながります。

    おわりに

    怪我のしやすさは、その人の筋力や柔軟性、体の使い方だけでなく、性別や年齢、競技レベルによっても変化します。例えば膝関節前十字靭帯損傷を例に挙げると、球技やノンコンタクトスポーツに多く、男性に比べて女性に発症しやすいなど、怪我の種類によっても変わってきます。

    大切なのは、誰でも怪我をするリスクがあると理解し、それを予防するための取り組みをすることです。

    今回の記事で紹介した内容を取り入れていただき、少しでも怪我の予防につながれば幸いです。


    寄稿者紹介

    佐久間英祥 Sakuma Hideyoshi

    理学療法士/愛知県東三河ブロリック所属

    2013年 男子U19世界フロアボール選手権 日本代表

    2016年 男子世界学生フロアボール選手権 日本代表

    2018年 男子世界フロアボール選手権 トレーナー帯同

    佐久間さんご所属のクラブチーム

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