はじめに
フロアボールの原理原則を調べてみる第4回は、オフェンシブトランジションに関するあれこれです。
4大局面における『オフェンシブトランジション』とは、ボールを奪い返した直後のフェイズを指します。
以下の項目では、その基本的な原則について海外の動画等を参考に記していきます。
オフェンシブトランジションの原則
オフェンシブトランジションは守備から攻撃に切り替わる際のフェイズのことを指します。ボール奪取直後は相手の守備陣形も乱れており、素早く攻め上がることで得点機会を得やすくなります。
スウェーデン協会の2020年の調査によると、 SSLの試合で生まれた 1,195 ゴール(5vs5の局面で)のうち、約 41% がこのトランジションフェイズで発生しています。
時間にすると僅か数秒ですが、攻守の入れ替わりが激しいフロアボールでは、トランジションが多く発生します。
チーム全体がボール奪取後の共通の考え方を持つことで、得点機会を生み出すことが出来ます。
ただし、オフェンシブトランジションの局面でボールを奪い返されてしまうと、相手チームと同じように自陣の守備が整っていないため、失点のリスクも高まります。
試合の状況に応じて素早く攻め上がるべきか、ポゼッションを重視してボールキープを優先するか適切に判断する必要があります。
奪取エリアによって異なりますが、トランジションの流れを一般化すると大きく3つに分けられます。
1.ボールを奪取した直後
選手間の距離で考えた場合、ボール奪取直後は、再び相手選手からのプレスを受けるため、多くの選手がより安全なコート後方(自陣方向)に向かってプレーをします。
ただトランジションでの攻撃チャンスは僅かな時間であるため、後方に向けたプレーは、相手陣形を整えるのに十分な時間を与えてしまいます。
ここで攻撃のチャンスを増やすためには、ボール奪取後ただちにコート前方(敵陣方向)にむけたプレーを行い、カウンター攻撃の機会を得ることが重要です。
デュエルでボールを獲得した直後の視野は最周辺に限定されている場合が多いため、ただちに近くのサポートプレーヤー(舵取り役)へボールを預けて展開することが望ましいとされています。
パスカットやシュートブロックでボールを奪取した場合で前方が開けているならば、その選手自らが力強くドリブルで前進することが相手守備陣を脅かします。
舵取り役(プレイメーカー)
攻撃の起点となるセンターやボールサイドのフォワードが主に舵取りを担い、ボール奪取直後に、大きく3つの役割を担います。
①ボールが奪取出来ると思ったら、サポート役としてポジション取りを行いつつ、攻撃ルートを確認する。(センター・両ウィングの位置、相手の守備位置)
②ボール奪取後は、直ちにボールを要求し、パスを受け取る
③コートの状況により、素早く前方へ展開するか、ボールキープを優先するか判断する
ボール奪取後のカウンター実行について、その判断を舵取り役に任せることで、得点のチャンスを逃さず攻撃を仕掛けられるという考え方です。
2.攻撃を行う意識
オフェンストランジションで重要なことは、”カウンターを仕掛ける意識”です。
”ボールを奪ったらまずは体制を整える”、”ラインチェンジのタイミング”という考えが根付いていると、大事な局面で攻撃のチャンスを失い続け、相手に脅威を与えることは出来ません。
また、相手の守備陣形が乱れているとはいえ、たいてい3人の相手選手(両DF・CF)はバランスよくポジショニングされていることが多いため、数的優位を作り出すためには、ディフェンスの攻撃参加が必要です。
写真の例は、ボール奪取後、全ての選手が相手陣地に向けてスプリントを行ったものです。
各選手は、決められたポジション・役割に固執せず、柔軟なプレーを行えるよう心がける必要があります。
3.ランニングパターン
オフェンストランジションは、相手陣地に向けて素早くスプリントを行うことが大切です。
コート深くなど、特定のエリアからのカウンター成功率を上げるためには、チーム内でいくつかのランニングルート・パターンを定めることが望ましいです。
一般的な攻撃パターンは、できるだけ早く中央のプレイメーカーへボールを渡し、ここから更にオープンスペースや深いエリアへ供給するなどで敵陣内へ侵入することとされています。
試合の流れや相手の攻撃状況によっては、味方選手が本来のポジションにいないケースも多く存在しますので、基本的なランニングパターンをベースに、ボールホルダー、サポートプレーヤーが独創性を持って攻撃を展開していくことが必要です。
4.フィニッシュポジション
スプリント後に狙う最終的なポジショニングは、ボールホルダーをサポートしつつ、それぞれがシュートを打てるエリアに位置することです。
基本的なポジションは以下のような形で、ボールホルダーに複数の選択肢を与えることです。
・LF(ボールキャリア)のシュート
・ファーポストでRFに向けたシュートパス
・CFに向けて斜め後方にパス
・右サイドバックのDFに向けてクロスパス
予め決められた位置にポジショニングする決まりごとがあれば、ボールホルダーの判断も早くなり、オフェンシブトランジションが完成しやすくなります。
サポートが間に合わない場合は味方の攻め上がりを待つのも戦術の1つですが、シュートを放つ時間とスペースが有る限り、積極的にゴールを狙うことが望ましく、カウンターチャンスを無駄に潰す必要はありません。
なお、フィールドにいる選手全員が右利き/右持ちの場合、右サイドから攻撃を仕掛けると、パスを受け取る選手全員がダイレクトでフォアハンドシュートを放ちやすくなるとされています。
おわりに
面白い記述、考え方が無いかネットで探し回っていたのですが、色々な媒体で記載されていることは、
選手の独創性が大事!
とにかく素早く走ること!
攻撃する意識が大事!
ということで、これがオフェンシブトランジションの原則なようです。
ちなみに、相手が特定のエリアに集結した場合、例えば自陣コーナーなどに二人相手選手がいるケースや、ゴール裏などに相手選手がいるケースでは、逆襲時に数的優位を作りやすくなったりするそうです。
全体像
・オフェンス全般
・4大局面/オフェンス
・ディフェンス全般
・4大局面/オフェンストランジション←本記事
・4大局面/オフェンス※追加(コーナー、ゴール裏、スロット内)
・4大局面/ディフェンス
・4大局面/ディフェンストランジション
・パワープレイ
・ボックスプレイ(キルプレー)
・PS
・セットプレイ ※ノープラン
参考:
スイス協会トレーナーツール:https://unihockeyplaner-knowledge.lernetz.site/taktik/4-spielerrollen
スウェーデンリーグユースチームプレイブック:https://www.vib.se/docs/350/7896/Spelbok%20VIB%20R%C3%B6d%20Niv%C3%A5.pdf
コツコツと作っております。
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