はじめに
海外で活動されているフロアボール選手のお話をお伺いしてみよう!の企画です。
今回、第2段といたしまして、由比 魁(ゆい かい)選手にインタビューを行いました!
インタビューのきっかけは、前回、スイス在住のラムサワー選手の取材をしていたところ、同じくスイスで活動している選手がいるよ!とご紹介頂いたのがきっかけ。
是非にとお願いし、お話をお伺いする機会を頂きました。
上記の写真はご所属のチームで撮影されたもので、その風格に驚きながらも実はまだ18歳!
所属クラブ内でも一軍へと昇格し、チーム最年少でスイスの1部リーグに参加されています!
なお、今回のインタビューではお母様にもご同席頂き、要所で通訳のご協力を頂きました。
記事中の言葉や語尾感についてもご協力を頂き、補足・編集して掲載しております。
由比 魁 選手ってどんな人?
ーよろしくお願いします!まずは由比さんについて教えてください!
<由比さん>初めまして!今は18歳で、高校3年生になります。住んでいるのはスイスのモルジュという街です!フロアボールは12歳から始めて今で6年目になりますね。
ーありがとうございます!フロアボールを始めたきっかけは何でしょう?
<由比さん>きっかけは学校の授業でフロアボールをやる機会があり興味を持ったのです。
元々は別の運動をしていたのですが、住んでいる街でフロアボールのチームを探したらすぐに見つかって、練習に参加したら凄い面白かったので、今も続けています。
ー他にはどのようなスポーツをされてきましたか?
<由比さん>はい、12歳までは器械体操をずっとやっていました。マットや鉄棒、吊り輪など…。一番好きなのは”鉄棒”でしたね!
ーあのグルグル回るのとか出来るのでしょうか?
<由比さん>ちょっとイメージしてるのは違うかもしれないけど(笑)今も少しは出来ると思います(笑)
日本のルーツとスイスの言語圏の話題
ーお住まいはずっとスイスなのでしょうか?
<由比さん>そうです!なので、日本に住んだことはありません。それでも2年に1回は日本に来ています。母の実家は福岡ですし、旅行では、京都、大阪、東京、沖縄などいきましたね!
ーお父様がスイスの方とお伺いしました!
<由比さん>はい、母が日本人、父がスイス人です。
ーそうすると、家の中では何語になるのでしょう?
<由比さん>私と母とでは、母が日本語で喋っているのでそれを聞き、自分は日本語やフランス語で返答しています。ちなみにモルジュはフランス語圏の街なんです!
ー言語がクロスしてるのですね!
<由比さん>はい、母はフランス語も上手なので。自分も日本語を覚えようと思っていて、努力をしています!
モルジュ/フランス語圏でのフロアボール
ーモルジュでのフロアボールの認知度はいかがでしょう?以前ラムサワーさんから聞いた話では、ドイツ語圏では99%近い認知と聞きました。
<由比さん>はい、こちらの地域でも人気のあるスポーツです!ただ、健太くんのドイツ語圏と違って、こっちのフランス語圏では少しスポーツの知られ方が違うと思います。
ーどういうことでしょう?スイスでは、フロアボールのTV中継があると聞いたことがあります。
<由比さん>実は、スイスには4つの公用語があって、3つの言語圏ごとにTVの公共放送局があります。
<由比さん>健太くんが住んでいるチューリッヒなどのドイツ語圏では、TVでリーグ戦の放映などがよくされているので、色々な人が、『あ、こういうリーグ戦があるんだ』と、そのスポーツの広がり方を知っています。
でも、自分の住んでいるフランス語圏の放送局では、フロアボールの試合は一切放送されていないのです。
ーなるほど、言語圏で文化がだいぶ違うのですね。
<由比さん>はい、なのでフランス語圏ではスポーツとしてのフロアボールは知られているけど、大きなリーグ戦や世界大会があることを知らない大人も多い、という印象ですね。
所属チームのことについて!
ーご所属のチームについて教えてください!
<由比さん>今自分は、リュック・フロアボール・エパランジュ(LUC Foorball Epalinges)というローザンヌのチームに所属しています!
ーローザンヌはお住まいから近いのでしょうか?
<由比さん>隣の街ですね!自分は、車の免許を持っているので、いつも1人で運転して練習に向かってます。だいたい20分ぐらいの場所ですね。
ースイスリーグでのカテゴリはどちらに?
<由比さん>ローザンヌのチームは1.LIGA(1部リーグ)に所属しています。健太くんのチームと同じレベルのカテゴリですね。
1.LIGAは、地域毎の2ブロックに分かれているので、普段は健太くんのチームと直接試合をすることはありませんが、お互いのチームが優勝すれば、戦うこともあるでしょうね。そうなったら楽しみです。
ー今のチームで、ご自身の立ち位置は??
<由比さん>1軍に入ってまだ日が浅いので、自分の確立された役割というものはないのですが、レギュラーになれるように最大限頑張っています。
ここ何試合かはレギュラーで出してもらっていますが、約束されたポジションではないので、それに向かって努力しています!
ー同時にローザンヌのU21に在籍されているともお伺いしました
<由比さん>はい、ローザンヌのU21のチームにも参加していますよ!同じクラブ内の違うカテゴリで同時に試合に出ることは、珍しくはありません。
ー試合数がたくさんになりそうですね!
<由比さん>はい、2チームに入っているので週末は忙しいです(笑)例えば一日の中で、1軍で試合したあとに、U21の試合に出たりと、結構大変。それ以外にも公式戦の審判もやっているので、大忙しですね!
SVヴィラー・エルジゲン/U18での経験
ー調べてみますと、由比さんはヴィラー・エルジゲン(SV Wiler-Ersigen)にも在籍されていたと!
<由比さん>はい、今年の6月までの1年間、U18チームに在籍していました!正直とにかくみんなすごい!フランス語圏のチームとはレベルがぜんぜん違います!
<由比さん>成人男子チームの1軍は22/23年シーズンのナショナルリーグ優勝を果たしてますし、自分が所属していたU18もリーグ準優勝の成績。
チームメイトにはスイス代表選手が何人もいました。プレーが早いしとにかく正確なんです。間違えない。
1年チームに参加しましたが、とても勉強になりました。リーグ戦が始まる前の合宿では、あまりに徹底的な練習で本当に辛かったです(笑)
ー凄い経験ですね…。ちなみに、ヴィラー•エルジゲンはどこの街にあるチームなのですか?
<由比さん>ヴィラー・エルジゲンは、ベルン州のキルシュベルグという街にあります。自分の家からだと、電車とバスを乗り継いで、2時間半ぐらい離れています。往復5時間です(笑)
ーなんと遠い。高校にも通われていたと思いますが、1年間どのように?
<由比さん>実は自分の学校はスポーツ専門の高校で、午後は授業がないのです。なので移動時間は毎回かなりかかりましたが、週2回の練習に参加ができたんですよね。帰りは深夜になることもありましたが(笑)
ただ自分の年齢的に、次の年度はU21のカテゴリになってしまうのです。チーム練習の開始時間が更に遅くなり、参加はできても帰れない時間になってしまうので、1年限りで地元のチームに戻りました。
WFCQ2024日本代表選考への参加
ー今回、WFCQ2024の日本代表選考に参加されているとお伺いしました。どのような流れだったのでしょうか。
<由比さん>もともとは自分にそういうチャンスがあるかどうか知りませんでした。
きっかけはローザンヌのチームメートで、フランスとの二重国籍の選手がいて、フランス代表に選出されたんです。
それなら自分も日本でチャンスがあるかも、と思い、海外在住選手も対象になり得るのか連盟に問い合わせたのが最初でした。
それは2021年の16歳のときで、U19チームへ応募したかったのですが、コロナでチームが編成されなかったので出場はできませんでした。
ーなるほど、きっかけはチームメイトの方だったのですね。
<由比さん>はい、その後は2022年のアジア予選に健太君が出場したことを知って、さらに日本代表への夢が膨らみました。
健太くんとは、WFC2019の女子大会を観戦していたときに偶然初めて会ったのですが、その後も連絡を取り合っていて、日本代表についていろいろ質問したり、アドバイスをもらっていましたね。
ー今回の応募はどのように?
<由比さん>はい、母にしてもらいました。いつも日本連盟のHPをチェックしてもらっていて、代表選手公募の告知を見つけ、エントリーをして夏の選考会に参加しました。
ー日本での選考会はいかがでしたか?
<由比さん>まず日本で練習したのは初めての経験でした!みんなとても優しかったし、スイスでどんな感じでホッケーをやっているかも質問されたし、とても楽しかったですね。
体育館は夏のせいですごく暑かったし、会場は36℃ぐらい?なので、すごくきつくて汗びっしょりでした(笑)
練習に参加して率直に思ったことは、日本の選手は動きが早いですね!敏捷性がとてもあるように感じました。
由比さんってどんな選手?
ー由比さんは日頃どんな性格なんでしょう?熱い性格?冷静な性格?
<由比さん>よくふざける性格ですね(笑)
ー…ふざけるとは?(笑)
<由比さん>冗談を言うとか、変な行動するとかです(笑)面白いことをしたり言うのが好きですね。もちろん真面目なシチュエーションのときは別です。
ー試合中はどうなのでしょう?得意なプレーは?
<由比さん>試合中は、物凄く集中していると思います。自分の一番良いプレーが行えるように最善を尽くしています。
自分はディフェンスなので、フィールドが全部見えている状態。周りの様子を見ながら、『もっと下がれ』と声掛けしたり、細かくチームメイトに指示してバランスをとることが多いですね。
得意なプレーは相手のシュートをブロックしたり、身体を使って阻止することだと思います。
そもそもディフェンスは相手と身体をぶつけながら戦うことを嫌がってはいけない、進んで行う必要があると思っているし、そういうプレーが好きなんです。
日本代表に参加する意味
ーたくさんのお話ありがとうございます!締めに入っていくのですが、ホッケーでの目標をお聞かせください!
<由比さん>自分のクラブでは、更に上のリーグに進みたい!そして、日本代表になってフィリピンでの予選会に参加することが目標です!
その次はスウェーデンでの世界選手権で、日本代表としてプレーするのが一番の目標ですね。
ーありがとうございます!選考は続くと思いますが、最後に意気込みをお願いします!
<由比さん>はい。日本という自分にルーツのある国を代表してプレーをすることができれば、それは人生の誇りに思いますし、夢でもあります。
絶対に日本代表に入りたいと思っています!
<取材:2023年10月下旬>
おわりに
日本から約9,600km離れたスイスの地に、代表選出を願うフロアボールプレーヤーがいらっしゃいました。
お話をお伺いしながら、締めの言葉として頂いた意気込みを直接聞いて、ぐっと心掴まれるものがありました。ご自身のルーツである日本を代表して戦う姿を、ぜひ見ていたいと思います。
男子WFCQ2024は、来年の5月開催。日本代表選考はこれからも続きますが、良い結果になることを願っています。
これからも由比選手を応援していきます!
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