はじめに
海外で活躍するフロアボールファミリーのお話をお伺いしたいと思い、スイス在住のラムサワー健太さんにインタビューを行いました。
ラムサワー健太さんは、前回WFCQ2022では日本代表として活躍され、来年のWFCQ2024でも、一次選考を通過した選手の一人です。
今回のインタビューでは、
①ラムサワーさんは一体どのような方?
②スイスでどのような活動を?
③WFCQ2022出場のきっかけは?
などについてお伺いした内容となります。
今回のインタビューは、お母様にご同席頂き要所で通訳のご協力をいただきました。
記事中の語尾感や、つなぎの言葉などについても、ご協力を頂きながら、補足、編集して掲載しております。
ラムサワー選手ってどんな人?
ーよろしくお願いします!自己紹介をお願いします!
<ラムサワーさん>私は今23歳です!住んでいるところはスイスのチューリッヒ州の、デューベンドルフという街です。フロアボールは15年ぐらいで、8歳からプレーしています!
ーありがとうございます。お父様がスイスの方とお伺いしました。お住まいはずっとスイスなのでしょうか?
<ラムサワーさん>はい、お母さんが日本人、お父さんがスイス人です。私はスイスで生まれました。
日本に住んだことはないのですが、学校は夏休みが5週間、秋休み、クリスマス休暇、スポーツ休暇、春休みが各2週間程度あるので、幼少期には日本には何回も行っています!
ー日本でよく行かれる場所はありますか??
<ラムサワーさん>お母さんの家族が鹿児島に住んでいるので、そこは何回もいきましたね。それ以外は東京にもいきました。
スイスの祖父母達とは、家族旅行で一緒に北海道から東北、関東、関西、九州、鹿児島まで日本縦断旅行をしたこともあります。
最近は5年ほど行けていないので、今度は彼女と別の街にいこうと思っていて、それが楽しみです(笑)
ー素朴な疑問で、家の中では何語で会話されてるのですか?日本語を使う機会は?
<ラムサワーさん>お母さんと家で話す時は日本語ですね。難しい話になったらドイツ語に変わります。他で日本語をしゃべる機会はなかなかないです。
今回のような日本語でインタビューを受ける機会も少ないので、聞くのは全部わかりますけど、返事をするときは難しい部分がありますね。
日本語を聞く練習は、アニメで習ったりもしました。ONE PIECEが大好きです(笑)
ーありがとうございます!(笑)フロアボールは8歳から始めたとのことですが、そのきっかけは何でしょうか?
<ラムサワーさん>なぜかというと、フロアボールはスイスの学校でとても人気があるんです。
2年生のときに、自分のベストフレンドが先にフロアボールを始めていて、『健太もやってごらん』と誘ってきたのがきっかけです。
実際に見てみたら、『あ、なんかかっこいい、やってみたい!』と思って(笑)。始めてからは超好きになって、もう15年経ったって感じですね。
ー学校で人気があるのですね!
<ラムサワーさん>スイスの学校では、授業でフロアボールをやることもありますよ!あとは、友達と学校の休憩時間にも、サッカーも人気だけど、フロアボールをやることもありますね!
ースイスでフロアボールはどれだけ知られてるのでしょうか?
<ラムサワーさん>大人なら絶対99%の人が知ってると思います!学校だと、サッカーが一番人気で、その次がフロアボールですかね。沢山の人がプレーしています。
ーアイスホッケーなどはどうなのでしょう?
<ラムサワーさん>んー、人気があるということなら、アイスホッケーかもしれないけど、ライセンスを持っている人の数なら、フロアボールのほうが多いと思いますね。競技人口、チームに参加しているという意味です。
アイスホッケーは、道具も必要だし、スケーティングが必要。でも、フロアボールは始めるのが本当に簡単ですからね。誰でも始められます。
所属チームと、スイスのリーグ構造って?
ー所属されているチームについて教えてください!
<ラムサワーさん>今のチームはチューリッヒにあって、Glattal Falcons(グラタルファルコンズ)と言うフロアボール協会です。住んでいる街から、自転車で10分ぐらいですね。
ーグラタルファルコンズは、何部のチームですか?スイスのリーグ構造についても教えてください!
<ラムサワーさん>大人のリーグでは、ナショナル・リーグAとBがトップリーグ。その下は1部から5部まであって、グラタルファルコンズは1部のリーグに所属しています。
一番上のナショナルリーグAは、今シーズンからスポンサーが変わって、PRIME LEAGUE(プライムリーグ)に名前が変わっています。
<ラムサワーさん>フロアボールは人気のスポーツでチームが沢山あります。1部リーグからグループが2つになっていて、2部以降はグループが4つもあったりします。
この他、世代別のリーグや、コートサイズが違うリーグもあります。『GF』は大きいコートで5vs5のリーグ。『KF』は小さいコートで3vs3のリーグのことなのです。
ーグラタルファルコンズは所属何年目でしょうか?
<ラムサワーさん>今が3年目のシーズンですね。クラブ内にいくつもチームがありますが、1年目からファーストチームに参加しています。
ーどのようなチームなのでしょうか?
<ラムサワーさん>2018年に2つのクラブが合体しました。メンバーは、プライムリーグを経験した30歳を超えた選手も何人かいるし、若手の選手も入り始めました。
U21やU18代表を経験している選手もファーストチームに加入しているので、全体的なレベルが上っているとは思います。
ただ、自分と同じ世代である、23歳~27歳の中間層は少ないですし、ベテランと若手の経験のギャップは大きいですね。
ー自身の長所や、チーム内での役割はどのようなことでしょうか?
<ラムサワーさん>年齢的には中間層なので、若い選手を引っ張るような立場だと思っています。見本となるプレーをしたり、モチベーションのコントロールなどで、若手選手にヒントを与えるような事を示したり。
自分の特徴は、スピードがあるほうなので、それを生かしたプレーやドリブルですね!
UHC Uster(ウースター)にも所属していた
ー過去の在籍チームで、UHC Uster(ウースター)にも所属されていたと伺いました。日本がSG OPENで戦ったチームです。
<ラムサワーさん>はい、大体2年ぐらいですが、19歳から21歳の頃にウースターのU21チームに所属していました。ウースターのフロアボール協会の会長からスカウトされて入団したんです。
U21のリーグ戦も、カテゴリがABCDの4つあって、ウースターのU21はトップカテゴリのAに位置する強豪チームです。
元々在籍していたグラタルファルコンズのU21はカテゴリーDだったので、最初はトレーニングについて行くのが大変でした。
このチームの練習は厳しく、週4回、集中したトレーニングを行っているし、集まっている選手のレベルもかなり高いです。
それでも根気よくトレーニングに欠かさず参加してチームの練習に合わせられるようになってきました。
日本代表参加のきっかけ
ー前回WFCQ2022に参加されました。こちらはどのようなきっかけがあったのですか?
<ラムサワーさん>日本チームに入りたいと思ったのは、18歳の頃からですね。
最初は制度をしらなかったのですが、ウースターのカスパー監督や、UBN※のマット監督と話したことがきっかけですね。
『健太は日本の国籍あるの?』って。
※Unihockey Bassersdorf Nürensdorf/スイス一部リーグ所属
<ラムサワーさん>カスパー監督に国籍があることを伝えたら、『もしかしたら日本チームに入れる可能性があるよ!』と話してくれたんです。スキルはあるから、ちゃんと努力するように、と。
マット監督とは対UBNのリーグ戦などで会い、自分のプレーを見てくれていました。そこでは『日本のナショナルチームのフォワードに適している』と話を頂き、その言葉などで日本チームへの加入に興味が湧いていったんです。
ちょうど自分は、ウースターの高いレベルのプレーを見て、『あ、すごい、フロアボールってこんなふうにも出来るんだ』と知った時期でもありました。
実際、練習は大変だったけど、ここで2年間しっかり鍛えて力を付けて、日本代表チームに応募しようと思ったんです。
ーなるほどです!日本連盟には自ら直接連絡されたのですか?
<ラムサワーさん>そうです、自分で連絡しました。大会ギリギリだったと思います。パスポートも切れてたので、急いで作って間に合いました(笑)
ー公募なので、この方は誰なんだろうと連盟の方も驚いていたのでは?
<ラムサワーさん>そうかもしれません。なので、スイスのこういうところでプレーしてると説明したり、試合の動画を送ったりしましたね。
あとは、先にU19で出場していたカイラスムセン選手(同スイス在住)と交流があったので、日本に推薦や説明をしてくれていたんだと思います。
ー無事にWFCQ2022出場を果たして
<ラムサワーさん>初めての出場だったので、まずは雰囲気を楽しもうと思っていました。
チームメイトとも初めてリアルで会って、色々な話をして距離も近づくことができました。大会直前まで、お話などをしたことがなかったので。
<ラムサワーさん>実は、シンガポールで選手の皆さんとの合流当日、マレーシアとの練習試合のときに、連絡がうまく取れなかったことがありました。
自分は先にシンガポールに着いていて、ホテルの集合予定場所で待機していたら、日本からの選手たちは、空港から練習会場に直接行くよう変更されたと。
その連絡を受け取り、急いでタクシーで会場へ向かったら、練習試合はすでに始まってしまっていました(笑)
すぐに着替えて準備したあとは、皆への挨拶も、ウォームアップをする暇もなくコートに入りましたね(笑)
ー大会で感じたことは
<ラムサワーさん>色々ありますが、試合映像を細かく分析して、次の国はこれだからこうしよう、キープレーヤーは誰だろう、などの準備が足りなかったと思います。
例えばこの選手はシュートが上手いから、もっと警戒する。この選手はこういう特徴があるなどの共有ですね。
試合前にそれを見て備え・指示することが大事だし、試合が終わったあとにそれらを再分析して、次の試合に向けて何を改善していくべきか考えることは、とても大切なことだと思っています。
ーWFCQ2024にも応募されている
<ラムサワーさん>はい、応募しています。なにより、前回大会に出場してWFC参加資格を得られなかったのが悔しくて。
次の大会での目標は、自分もチームも、もっと良いパフォーマンスを発揮して、2024年のスウェーデン・マルメのWFC出場資格を得たいと思っています。
しっかり120%の力を発揮します。
仕事の話など
ーフロアボール以外の部分について。お仕事は普段どのような事をされているのですか?
<ラムサワーさん>この12月までは、スイスで民間防衛の任務についています。
18歳以上の男性は徴兵で18週間の基礎訓練があり、それは終えたのですが、その後にも、毎年2-3週間、30歳ぐらいまで訓練を行うか、民間防衛を行う必要があります。
民間防衛は、老人ホームにボランティアに行ったり、災害支援を行ったりする、民間人を支援する制度のようなものです。
今はそこで、学習障害がある子たちが行く学校に入り、先生のサポートなどを行っています。
職業でいえば、スイスは中学が終わったあとに職業訓練制度があります。例えば、会社でも銀行でも色々なところで働きながら、3日間働き、あと2日間は学校に行くというものです。
そこでは、機械工学を修了したのですが、自分にとって、将来にわたってやりたい仕事ではないなと。
それよりも、ちょうどコロナ禍で、人とコミュニケーションを取るような仕事に興味があって、色々模索していたときに、学校教育に興味を持ちました。
なので民間防衛が終わったら、先生になるため学校に行こうと考えています。
契約の話や今後の目標について
ーラムサワーさんは、グラタルファルコンズと契約されているのでしょうか?
<ラムサワーさん>契約ではありません。
ナショナル・リーグBから契約選手も増えてきますが、私のチームは1部リーグのレベルなので、契約選手はいないですね。
もちろんクラブによって違って、近くの1部のチームでは、2-3人は契約選手がいます。
ーフロアボールだけで生活している人はいるのでしょうか?
<ラムサワーさん>20%仕事して、80%はフロアボールの契約分で生活している人はいるとは思いますが、それだけという人はまだ少ないと思います。
仮にトップリーグにいても、大体35歳ぐらいで現役引退などがあるので、いずれ仕事をしなければならないし、引退後に出来る仕事をキープするという意味でも、仕事と両立してプレーしている人がほとんどだと思います。
スウェーデンやフィンランドのトップ選手がスイスに来ていますが、彼らはフロアボールだけで生活していると思いますが。
ー生々しいですが、いくらぐらいなのですかね(笑)?
<ラムサワーさん>プライムリーグのトップ選手でも、1000-1200フラン(17-20万円)と聞いたことはあります。
ただ、住居や各種用具、練習場所の提供など、そういったサポートが別にあります。
あとスイスに来ている海外のトップ選手が同じかわかりませんが、もう少しもらっているかもしれません。
ーちなみにラムサワーさんってどんな性格なんですか?優しい・怖い・熱い?(笑)
<ラムサワーさん>自分で言うと、冷静な人だと思っています。落ち着いて観察するタイプかなと。
試合中なども、激怒したり監督に文句を言うタイプではありません。怒りを相手にぶつけずに自分にフォーカスして、次どうしようか意識を向ける。必要であればチームメートにアドバイスを与えるように心がけています。
ー沢山お答えいただきありがとうございます!最後にフロアボールでの目標を教えて下さい!
<ラムサワーさん>日本チームとしてWFCの世界大会に絶対参加したいと思っています!
クラブでも良いパフォーマンスを継続して、3年-4年ぐらいでひとつ上のカテゴリ、ナショナルリーグBに上がれるように、これからも頑張りたいと思います!
(取材:2023年9月)
終わりに
私事ですが、ラムサワーさんをWFCQ2022で始めてお見かけして、どんな方だろうとずっと興味がありました。
今後もこのようにサイトを通じて、世界のフロアボールファミリーと是非お話をさせていただき、良い形で記事作成を行いたいと思っています。
今回の記事で是非、親近感を感じて頂き、大会等参加時にはより力を込めて応援していただければと思っています。
男子WFCQ2024は、来年5月開催。
日本代表選手インタビューとしては、別途、連盟に申請を行い、改めて直前の心境などお伺いしたいと考えています。
スイスリーグは今月から開幕しています。これからもラムサワー選手を応援していきます!
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