はじめに
そもそもそれってなんなの?という、基礎知識のコーナー第2段。今回は、戦術に関連する話題です。
というのも、フロアボールの守備システムなどについて、なんとなーくでしかわかっていない私。
改めて、基本的な守備陣形の種類について調べてみよう、という回です。
守備陣形の種類
守備陣形は、相手がボールを持っている時の基本的な守備配置になります。大きな枠で分けると、ゾーンディフェンス、マンツーマンディフェンスの2つです。
ゾーンディフェンスは、選手それぞれがエリアを分担し、自分に割り当てられたゾーン内でのプレッシャーやマークを行います。その際用いられるフォーメーションは、主に『2-1-2』『1-2-2(W)』『2-2-1』の3つです。
マンツーマンディフェンスは、常に特定の相手選手に対して1対1でくっついてディフェンスをします。試合の最初から最後までこのフォーメーションを行うチームは無いでしょう。セットプレイやハイプレスなど特定の条件下で採用したり、オフェンス3人はゾーン・ディフェンス2人はマンマークというハイブリット(組み合わせ)型などで出現することが多いです。
守備陣形① 2-1-2(ダイスファイブ)
ゾーンディフェンスの中で最も多くのチームで採用しているフォーメーションで、サイコロの数字「5」のように選手が配置されているため、海外では「Dice-5(ダイスファイブ)」と呼ばれることがあります。
※みなさん『2-1-2』何と読んでるのでしょうか。『にーいちに』とか『つーわんつー』でしょうか。
2-1-2では、2人のフォワードで、相手ボールホルダーに対するプレスとマークを担当し、センターが中央のマークを担当します。
このフォーメーションの特徴は、最も危険であるエリアのスロット(≒ゴール前周辺)に対して、センターフォワードとDF2枚が常にケアできる点です。センターエリアでの優位を取り、ボールホルダーを危険の少ない場所や狙いの場所へ誘導していくフォーメーションです。
内容 | |
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メリット | ・陣形の採用がしやすい(動きが複雑ではない) ・危険なゾーン(スロット)がブロックされている ・攻撃に移行しやすい |
デメリット /リスク | ・相手ボールの誘導が難しく基本受け身 ・ポケットのディフェンスが弱点 ・DFとFWのコミュニケーションが必要 |
守備陣形② 1-2-2(ワントップ/W)
1-2-2の特徴は、コントロールプレーヤーとなるワントップを配置していることです。ワントップは、ボールホルダーへのプレッシャーをかけ、センターラインを横切るパスルートを遮断することにより、相手のプレーエリアを誘導することが目標の一つです。
また、1-2-2のフォーメーションで、相手を特定のプレーエリアへ誘導する際、選手の配置が「W」の形になっているように見えることから、海外では『W(またはM)』と呼称されることもあります。
特定のエリアへ何故誘導するか??
▶相手の強力なFWにプレーして欲しくない≒相手の弱いFW側から攻めさせる
▶自陣の強力なDF側へ誘導したい≒弱いDF側へ来て欲しくない
▶ダブルチームを仕掛ける場所(トラップ)へ誘導する etc…
内容 | |
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メリット | ・相手のプレーエリアを誘導しやすい ・チーム全体でボールの奪いどころをシュミレートできる ・ボール奪取後の反撃にも優れている |
デメリット /リスク | ・DFとトップの距離が広がりやすく間延びする ・スロットが薄く弱点になりやすい ・各ポジションに独自のタスクがあるため、選手の戦術理解が重要 |
守備陣形③ 2-2-1(リベロシステム)
リベロシステムは、相手選手に強いプレッシャーを与えたい場面で採用されることがある攻撃的なシステムです。
前方~中盤に人数をかけ、強烈なプレッシングを行うことで、相手を押し込んだり、ダブルチームでボールを奪った際に、素早く人数をかけて得点のチャンスが作れることが特徴です。
内容 | |
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メリット | ・プレッシャーを与えやすい ・サイドでダブルチームを書けやすい ・相手ゾーンで奪えば得点のチャンスが広がる |
デメリット /リスク | ・明確なセンターがいないので、ボール位置によって、柔軟にスロットを守る必要がある。 ・リベロとディフェンスの連携が重要 ・難易度の高いシステム |
国によって、数字の順番が真逆になります。例えば、北欧では、トップポジションに1人、ウィングに2人、ディフェンスに2人いる場合、攻撃側から『1-2-2』と呼びますが、スイスの場合、守備側の選手人数から順に数えるため、それは『2-2-1』と呼ばれています。一応このサイト内ではトップポジションから数える呼称で統一します。
エリアの名称
戦術の話になってきたので、当サイト内で使用する言葉も少しづつ定義しておきます。
上記は、IFFがルールで規定している言葉ではありません。強豪国のホッケーに関する資料を参考に、日本語化したものです。
この中で、覚えると意味がありそうなのは、
・『スロット』≒いわゆるゴール前(よりもう少し広いエリアでしょうか)を指します。最も得点が生まれるエリアで、オフェンス・ディフェンスともに、この位置のポジション争いを繰り広げます。次項も参照。
・『ポケット』→センターラインとゴールの中間ぐらいで、アウターゾーンのエリアのこと。ポケットは、シュートやクロスを狙う選手が非常に多い場所。特にゴールまでの距離と角度がシューターには丁度よい場所。ゾーンディフェンスの弱点となる、2人のディフェンスの間に形成されるエリアだから、”空洞”という意味のポケットという名称がついている。ズボンのポケットでない。
・『ハーフスペース』→ゾーンディフェンス側からすると、この位置にポジション取りされるのはやっかいで、誰がマークに付けばいいかグレーな状態になることが多い。海外の試合のハイライトを見ていると、ゴール裏やコーナー→ハーフスペースへパス→シュートの流れの映像が沢山出てきている。
スロット▶最も危険なエリア
2016年のWFCでは、全48試合で488ゴール記録されました。
そのうち64%である312ゴールは、スロットから記録されました(上記表の”Best Scoring Area”の箇所)
なお、本資料中では、この『Best Scoring Area』(=スロット)を『ゴールラインから約8m先までの三角形のエリア』と定義しています。
ちなみに直近のFリーグのデータでも同様の流れです↓↓(ゴールをしたいなら、ゴール前へゆけ!)
Some nice heatmaps from Finnish @f_liiga Men’s season 22-23. Shots on the left and Goals on the right.
— Floorball Scanner (@floorballscnr) December 28, 2022
If you want to score, go in front of goal.#salibandy #floorball #innebandy #unihockey pic.twitter.com/GMooq24JMa
つまり、どんな守備陣形でもスロットでの攻防は意識せねばならないし、そういう意味で、2-1-2の守備陣形は、複雑に考えずとも危険を排除している(可能性がある)ため、採用されやすいんだと思います。
おわりに
一旦ここまで。
守備陣形はあくまで初期配置であり、各ポジションの選手に役割があります。ただ何となくそこに位置して入ればいいわけではありません。
守備には様々決まりごとがあるので、そのあたりのマインド・哲学的な部分を次回は掘り下げたいなと思います。
雑談
次回どうするか考えてますが、例えば、この陣形を選んだ時この位置にボールがあったらどうすりゃいいんだろう?みたいな疑問を潰していくために、基本的な動きは提示してみようかなと思います。
実際はその相手の能力次第(+自分の能力次第)で様々な対応が考えられるので、深く追求すると、机上の空論になってしまうのでしょうか。奥深い。
参考
Svensk Innebandys Tränarutbildning Steg 1 Svart:スウェーデンフロアボール協会発行
Trainertool – Lernbausteine – Lernbücher/スイスフロアボール協会
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