【インタビュー<後編>】T3 FLOORBALL PROJECT/HP公開と戦術について聞く

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後編:はじめに

これまで様々な普及活動に取り組まれてきた、『T3 FLOORBALL PROJECT(ティースリー フロアボール プロジェクト)』。

前編ではHP公開に関連して、戦術面に関する日本フロアボール界の課題と、そのアプローチについてお伺いしました。

後編では、それらの思考に行き着いたきっかけと、講師派遣のアップデートなどを含めた今後の活動についてお伺いしています。

◆前編はこちら

気づきのタイミングとコーチの存在

田島さんと髙橋さんはこれまで数多くの国際大会に出場されるなど、周りの方と比べて経験が大きく違うと思うのですが、戦術の大事さなどに気づいたタイミングやきっかけはなんでしょうか?

<田島さん>戦術どうこうについて思ったのは、2008年の国際大会に出場した時(※当時24歳)で、ヤン近藤選手と同じセットを組めたことですかね。そこでいい気づきを得られました。

そもそも日本でやってるフロアボールが、”フロアボール”じゃないと気づいたのは、2003年のU19の大会に出たときなので、19歳のときですね。

<髙橋さん>私は初めて世界大会に出たのが16歳、初戦がスウェーデン戦で。相手が圧倒的に強いのはわかってたんだけど、私達1対9で負けたからかなり善戦だったんですよね。

すごい善戦したっていうのは、他の国からも言われてたんだけど、その内容を見たときに、スウェーデンの人たちがやってるのは”フロアボール”で、私がやってんのは何だろうって最初疑問に感じて。

そのときは、日本で今までの自分の練習をもっと頑張っていけば、近づけると思っていたけど、大学卒業してからスウェーデンに行った時に、やっぱり通用しなかったっていうところが大きかったですね。

IFF Flickrより

さきほど(※前回記事参照)も名前の出たアンテは、私がプレーヤーとしての考え方が変わったコーチなんですけど、『スピードやテクニック、アジリティは通用するものを持ってるけれど、戦術的思考がまるで無い』って言われて。

確かに、スウェーデン2年目3年目で活躍もできなくて、1年目のときは、なんか私だけやってること違うなって違和感はあったけど点を取れたり数字には残っていてシリアスに考えなかったんだけど、ボロが出始めて。

そこでようやく、自分が今まで違う方法で学んでいたし、戦術的思考が積み上げられてなかったことに気づきましたね。

アンテコーチはT3で招いたコーチですか?

<田島さん>ちょうどT3ができる前後でしたね。

髙橋さんもったいなかったのは、せっかくコーチを招いたのに、田島さんのように気づきがあったり思考が変わったりして、それをその後に活かしてくれた方が少なくて。

<田島さん>視点が変えられるかどうかが、コーチに必要な才能に当たると思っていて、自分は数学とか嫌いだけど、ゲームを分割して考えてコーチをやると物凄く面白いし、実際にそういうコーチを抱えたチームと戦ったら楽しいなと思います。

髙橋さん私も元々はずっと選手で考えていて、コーチって面白いなとか、コーチの視点でゲームを見る大切さを教わったのは、アンテがU19のスウェーデン大会(2015年)のときに、日本代表男子のベンチコーチで入ってくれたのがきっかけで。

IFF HPより/日本U19のコーチを務められたアンテコーチ

アンテが横で話していることを通訳したり、試合中につぶやいてるものを聞いて、なにかのタイミングで、コーチの視点が”ぱっ”とわかって。

それまでは試合をただ見ているだけだったのが、戦術的思考とか、コーチの目線だとこう考えるんだなっていうのがわかったのは、大きかったです。

<田島さん>良いコーチは見てる視点が違うからね。たしか由衣と一緒に行った、女子のフィンランド大会で、デンマークとやって負けたときかな?

自分は代表コーチを務めていたんですけど、試合が終わった後に『あれはここが良くなかった』とアンテが話していて。それを踏まえて試合映像を見返すと、なるほど本当にそうだな、と。

例えば、壁が出来てないこと、体の向きが間違ってるからボール止めれずすり抜けること、ディフェンスのポジションが全然なってないこと。

自分たち的には、形ができていると思っていても、その一瞬の試合を見たときに、ここができてる、できていないっていうのを瞬時に見抜いて、しかも終わった後にちゃんとアドバイスもくれる。絶対それだけじゃない高いレベルを持っている人なのに。

そういうことを言われるだけで、自分は新たな視点が頭に入ってきて、日本の国内のリーグもそれで見れるようになったんですよね。

アンテは本当に素晴らしいコーチだし、このレベルでやってるコーチがいるんだから、スウェーデンのフロアボールって面白いんだなって、改めて思います。

IFF Flickrより

髙橋さん私も10年でたくさんのコーチに出会ってきましたが、自分が明らかにバーン!と成長したきっかけは、間違いなくコーチの力だなと思ってます。

私がアンテに言われたように、日本人選手でも、技術とスピードがあるなら、そこはある程度通用するとは思っていて。

フィジカルの問題でいえば、日本では、フィジカルもフロアホールの一部、とはまだなってないから、そこは鍛えなければいけないし、私もスウェーデンに行ってから本格的に取り組みだしました。

ただ、スウェーデンでも、まだフィジカルは後からいくらでもつけられるからっていう考えがあって、まずは技術と戦術的思考の基礎があるかどうかをよく見られる。

だから今の日本代表の選手でも、技術やスピードのある選手がいるわけだから、そこに指導者がいて、段階踏んでチームのプランを考えて、それに合う練習をしていけばもっと結果が出るんじゃないかなと思っています。

意識を変える環境づくり

これまでのお話のようなことを、自分自身で気づく選手が増えればいいのですが、特に若手の16歳-18歳で自ら気付くには難易度が高く思えます。講師派遣以外に、どのようなきっかけや仕掛けで意識が変わると思いますか?

髙橋さんチャンスがあるとすれば、私達がやっていた外国のコーチを日本のチームに派遣する練習に参加してもらうことですが、”気づき”という意味では、知ってたことを言われただけだったって感じる人も多いと思っていて。

例えば、お金に余裕があれば、T3で子供たちを連れて本場のスウェーデンに行って、本場のコーチをその期間だけでもつけて練習するとかですが、そこで、『日本とスウェーデンで考えることにこれだけの差があるんだ』って気づけるかは、本人次第になってくるのかな。

<田島さん>ただ見るだけだとあまり響かないと思っていて、自分たちと同じように、本気でやってる人たちを観て、本気でやってるクラブの内容だけを見たりとかすればガラッと変わるから、世界大会に本気で挑みたいと思う選手がどれだけ増えるかどうかが大事だと思う。

ネックがあるなら、日本のフロアボールの環境で、子供たちは『ネオホッケー』が導入になっているところかな?

中学生まではフロアボールの大きい大会も年に1回2回で、日頃の練習はネオホッケーメインとなると、『フロアボール』の練習に時間を割くのが難しいと思うんですよね。

髙橋さん例えば、U19やA代表に参加する選手は意識が高いから、もし代表にそういう思考を持っているコーチがつけば、代表練習に行ったらこんなに違うことを教えてもらった、自分たちが今までやってきた練習は違うんだっていうことに気づくチャンスになるかなとは思います。

あとは代表選手自身に伝わっても、クラブに波及させる力があるかわからないので、そもそも代表練習自体に各クラブのコーチや指導者に来ていただき、練習の違いを見て持ち帰って頂けたら、日本全体の強化に繋がるなと思っています。

<田島さん>同じ意識を持つ人が増えれば面白そうだし、各クラブにコーチがいればいいね。

髙橋さん少し話が戻ると、例えばアンテは、色々なことについて『こうだよ』としっかりと断言してくれるんですよね。

しっかりとしたコーチから、しっかりと学ぶ意識を持っておけば、『コーチが自分の知識に自身が持てないまま教えている』っていう状態もクリアできると思うんですよね。

◆NEXT//講師派遣と今後の活動について

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