はじめに
スウェーデンリーグに参戦されている髙橋由衣選手。
髙橋選手が所属されているIBK Dalenは、スウェーデンリーグで上から2番目のレベルのカテゴリであるアルスヴェンスカン(Allsvenskan)に位置しておりますが、今シーズンも絶好調で地区優勝を果たし、来週からSSLへの昇格戦へ挑みます。
スウェーデンリーグに関する情報は気軽に情報を入手しづらいので、改めてその昇格戦のシステム等について髙橋選手に解説をしていただきました!
寄稿者紹介
髙橋由衣 Takahashi Yui
IBK Dalen所属
T3 FLOORBALL PROJECT 副代表
15歳でフロアボール女子日本代表に初選出。以後世界選手権8大会連続出場。大学卒業後に単身でフロアボールの本場スウェーデンに移住し、スウェーデンリーグで現在も選手として活躍中。2017年より国際フロアボール連盟(IFF)の選手委員会メンバーに二期連続で選出。国際的な普及活動にも取り組んでいる。
スウェーデンでは、シーズン最終盤のプレイオフ/昇格戦へ突入!
9月から始まったヨーロッパのフロアボールシーズンはいよいよ終盤に差し掛かってきています。
3月3週目から、スウェーデントップリーグSSLではレギュラーシーズン上位8チームによるプレイオフが、そしてもう一つの熱い戦いである2部リーグのAllsvenskanからSSLへの昇格争いが始まります。
今回は私が所属しているIBK Dalenの数シーズンを振り返りながら、AllsvenskanからSSLへの昇格システムについて説明したいと思います。
IBK Dalenの数年の動向
IBK Dalenの女子チームは、Allsvenskanのカテゴリに属していますが、2019/20シーズンまでSSL常連のチームでした。
その2019/20シーズンでは、まだ試合が残されていた状況で新型コロナウイルスによりリーグ戦が中断、その時点の順位により降格が決まってしまいました。
当時私はクラブの2軍であるIBF Dalenに所属していて、SSLで戦っているIBK Dalenの契約を勝ち取るのを目標にしていました。
IBKの選手は私にとって憧れで、まさにスター軍団のような存在でした。まだ試合が残されていて、順位が上がる可能性も大いにあったという状況だったため、IBKの降格はなかなか受け入れられませんでした。
ただIBKの選手たちは腐ることなく、1年でのSSL返り咲きを目標にトレーニングに励んでいました。そして迎えた2020/21シーズン。IBK Dalenは開幕から無敗で5連勝したところでまたしても新型コロナウイルス拡大のためリーグ戦中断、そのまま再開されることはなく、このシーズンは昇格も降格もありませんでした。
そして2021/22シーズンで私は、Dalen生活6シーズン目にしてずっと目標にしてきたIBK Dalenの契約を勝ち取り、その勢いのままSSL昇格に向け週6日の練習に励んでいました。リーグ戦も2位で終え順調に入れ替え戦まで進んだのですが、入れ替え戦1ラウンド目で敗退し昇格は叶いませんでした。
Allsvenskanはどんなリーグ構造?
まず、スウェーデン2部リーグであるAllsvenskanは女子は東西南北の4ブロックに分かれています。Allsvenskanリーグが4つあるということです。
各ブロック8チームが属していて計32チームがAllsvenskanで戦っていることになります。
レギュラーシーズンはそれぞれのブロックでホーム&アウェイ方式で戦い(14試合)、更に北ブロックと東ブロックが各チームと1試合ずつ、南ブロックと西ブロックも各チームと1試合ずつ(8試合)戦います。
私が所属しているIBK Dalenは北ブロックなので、東ブロックに属している8チーム全チームと1回ずつ試合をしました。シーズンによっても異なるのですが、今シーズンは全チーム22試合をし、その勝ち点により各ブロックの順位が決まります。ちなみに勝利は3ポイント、引き分け1ポイント、5分間の延長で勝利すると2ポイントの勝ち点がもらえます。
今シーズンのIBK Dalenの成績は、全22試合で20勝2分の北地区1位となり、今週末から開始される昇格戦進出を決めています。(2分けのうち延長で1勝1敗)
※ちなみに、2024/25シーズンからシーズンのフォーマットが変わる予定で、女子は4ブロックから2ブロックへ、男子は北・南の2ブロック(各12チーム)から1ブロックに変更予定です。
AllsvenskanからSSLへの昇格方法
さて、AllsvenskanからSSLへの昇格方法ですが、最終節終了時点で、各ブロック2位までが昇格戦に進めます。
※北ブロックのRIG Umeåというチームは、スウェーデン協会がエリート選手を育成している高校のチームのため、2位以内に入っても昇格戦には出場できないことになっています。RIG Umeåが2位以内に入った場合は繰り上がりで北ブロック3位のチームが昇格戦に進みます。
昇格戦は全部で2ラウンドあり、まず、北ブロックの1位が東ブロックの2位(A)と、北ブロックの2位が東ブロックの1位(B)が昇格戦ラウンド1を戦います。
そしてAとBの勝者が昇格戦ラウンド2を戦い、勝利したチームがSSL昇格となります。
南ブロックと西ブロックでも同様に昇格戦ラウンド1、2を行い、2の勝者がSSLに昇格します。
Allsvenskan全32チーム中、SSLに昇格できるのはたったの2チームだけなのです。
ラウンド1も2も先に2勝したチームが勝ちのベスト・オブ3方式で戦います。そしてラウンド1では各ブロックの1位のチームのホーム戦から始まるため、1勝1敗で第3戦目にもつれ込んだ場合はブロック1位のチームの方が少し有利になっています。
ラウンド2はリーグ戦の勝ち点が多かった方のチームがホーム戦でスタートします。
各ラウンドともに1週間~9日で最大3試合するスケジュールになっているため、平日の試合も含まれます。仕事や学校のスケジュールと調整しながら試合に臨みます。
めちゃくちゃ過酷!
昨シーズン私は初めて昇格戦というものを経験しましたが、長時間のバス移動、1戦目を落としたあとの気持ちの切り替え方、仕事の調整などなど、長いキャリアの中でも経験したことのない身体も心もとてもタフな1週間でした。
まさに、勝てば天国ですが、負けたら地獄でまた次のシーズン1からやり直しなんです。
今シーズン私達の最大の敵は、昨シーズンまさかのAllsvenskan降格となったKAIS Moraです。チーム名を聞いたことある方もたくさんいると思います。KAIS Moraも2007年からずっとSSLで戦ってきて、7度のファイナル出場や優勝経験もある名門中の名門です。
そんなチームでも、主力選手が複数移籍してしまったり、世代交代が上手くいかなかったりするとあっという間に降格してしまうのがSSLです。そして降格したチームの中心選手は他のSSLのチームに移籍するケースが多いため、次のシーズンに一発でSSLに返り咲くということは滅多に起きません。
ただKAIS Moraは昨シーズンからの選手が結構残っていますし、今シーズン負けなしで東ブロックを無双しており、1シーズンで返り咲くという気合いがひしひしと伝わってきます。ちなみにレギュラーシーズンでのIBK Dalen対KAIS Moraの試合は、フルタイム7-7の引き分け、延長線でKAIS Moraがゴールを決めて8-7でKAIS Moraの勝利となりました。ハイライト
2022/23シーズンの北・東ブロックは、IBK Dalen悲願の昇格か、KAIS Moraが1年で返り咲くかといった声が開幕前から多く聞こえました。本当にどっちが勝つか分からない、互角の戦いになると思います。
そんなタフでエキサイティングな昇格戦ラウンド1は3月18日から始まります。
SSLプレイオフだけでなく、SSLへの昇格戦にもぜひ注目してみてください。
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