寄稿者紹介
髙橋由衣 Takahashi Yui
IBK Dalen所属
T3 FLOORBALL PROJECT 副代表
15歳でフロアボール女子日本代表に初選出。以後世界選手権8大会連続出場。大学卒業後に単身でフロアボールの本場スウェーデンに移住し、スウェーデンリーグで現在も選手として活躍中。2017年より国際フロアボール連盟(IFF)の選手委員会メンバーに二期連続で選出。国際的な普及活動にも取り組んでいる。
世界選手権・アジア太平洋予選を観て
いやー、ハラハラドキドキどんでん返しのアジア予選でしたね。
私も、これを読んでくださっているほとんどの方と同じく、大会5日目のオーストラリア戦後に「え?世界大会出られるの?」となった一人です。
何はともあれ、世界選手権本戦への出場権獲得、本当によかったですね!人数が少ない中で連日戦っている後輩たちを観ていて感動とともに何もできないもどかしさが日に日に大きくなりました。
今大会は、私がこれまで聞いたこともない6連戦!3連戦ぐらいでも身体がしんどくなってくるのに、その倍6連戦を、フルメンバーでない16人で戦い抜いたのだから本当に大したものです。
しかも世界選手権への出場権は上位2チームのみという、前回までに比べて狭き門でした。
大会前は日本・オーストラリア・タイ・もしかしたらフィリピンが上位に食い込んでくるかと予想していましたが、大会が始まってみたらフィリピンはまだ発展途上でしたね。
アジア予選のプレッシャー
自分がアジア予選や世界大会に出てきた経験を話すと、アジアでのトップ同士の試合って、身体よりも心が疲れるという感覚があったのを覚えています。
世界選手権の出場権がかかっていたり、アジアチャンピオンとして対アジアには負けられないというプレッシャーがあったりして、試合が終わったあとは気持ちの方がどっと疲れました。
反対に世界選手権でヨーロッパの国と戦うときって、いつもこっちがチャレンジャーなので失うものは何もなくて、ある意味ノンプレッシャーで戦えるんですよね。
そんなプレッシャーがかかる中でのタイ戦でしたが、それまでの相手とはレベルがグンと上がりハラハラする試合でした。4-1までリードしてからの追いつき追い越されはしんどい試合展開だったと思います。
こういう競った試合って、上手い下手よりも心を強く持てるかどうかが鍵だと思うんです。そしてそれはそれまでにどれだけ、国際試合で修羅場を経験しているかだと思います。やっぱり経験なんですよね。
今回のチームには横田選手、菅谷選手、後藤姉妹といった修羅場を乗り越えてきた選手がいました。チームとして修羅場を通り抜けてきた選手がどれだけいるかって、こういう試合では重要になるんだなと改めて思いました。
特にキャプテンの後藤選手は強い心と確かな技術で日本を引っ張っていましたね。本当にかっこ良く、頼もしかったです。
ベテラン勢の姿、大事なゲームでのプレー、気持ちの持っていき方などを今回若い選手は間近で学べたのではないでしょうか。
ぜひ経験を重ねて、次は自分たちがチームを引っ張り、そしてその次の世代へと繋げていってほしいです。
予選通過のサプライズ
後が無い状況で迎えた5日目のオーストラリア戦でも、キャプテンの後藤選手を筆頭に日本のプレーからは最後の最後まで諦めない気持ちが伝わってきて、観ていて本当に感動しました。そんな選手たちの想いが、あのサプライズQualifiedに繋がったのかもしれません。
女子日本代表はこれまで何度か奇跡を起こしていますが(2011年アジア予選や2015年世界選手権のシンガポール戦など)、今回の出場権獲得は歴史上最大の奇跡だと思います。
出場権を獲得して色んな不安やプレッシャーから開放された選手たちは、最終日の決勝オーストラリア戦を生き生きと楽しそうに戦っていましたね。
今大会、初出場の若い選手たちが国際大会初ゴールを決めたりと活躍していたのも印象的でした。初出場の選手のゴールはチームが盛り上がり勢いがつきます。今大会はそんなシーンを多く見ることができました。
初ゴールの際にもらえるボールは一生の記念ですね。私はもらえなかったので…ぜひ大事に保管してほしいと思います。そして世界大会でもゴールを決めて、もう一つボールを持って帰って欲しいです。
フロアボールと怪我
今大会で決して忘れてはいけないのは、怪我で出場が叶わずサポートに回った選手たちの存在です。
私自身2015年のアジア予選では1試合目に膝の靭帯を断裂し、残りの試合をベンチから応援した経験があります。チームは優勝し世界選手権への出場権も獲得してくれましたが、試合に出られなくて悔しい気持ちがあったのを覚えています。
そんな中で今大会は山中選手が大会前の練習中に大怪我を負いながらもチームに帯同し、大きな声でベンチを盛り上げていました。またタイ戦で怪我を負ってしまった菅谷選手も、怪我を負うまではコート上でベテラン選手として逞しいプレーでチームを引っ張っていました。
特に競った試合の時に、選手たちがベンチに戻ってくる度に声をかけ、励ます二人の姿に本当に感動しました。戦っていた選手たちも二人からのかけ声に何度も助けられたことでしょう。
悔しい思いがありながらも、ベンチにいる選手全員がチームのためにできることを精一杯やるというのは、日本女子チームの素晴らしいところ、強さだと思っています。
おわりに
6連戦、身体も心も本当に疲れたと思います。選手のみなさんにはしっかりと自分自身を労ってあげてほしいです。選手だけでなく伊川監督、金川トレーナーも大変な6日間だったと思います。
日本チームのみなさん、本当にお疲れさまでした!そして世界選手権出場権獲得とアジア優勝、本当に本当におめでとうございます!!
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